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プロローグ
夢を見た。
自転車に乗った学生達がまばらに坂道を上っていく。私もその中の一人だ。
久しぶりに漕ぐペダルはただでさえ重く、他の学生達と同じように涼しげな顔をしていられない。
苦しくて余裕がないくせに、視線が定まらず周りを見渡していると、明らかな異物が道端に転がっているのに気づいた。
白線に沿うように寝かされた真っ白なバスローブ、真っ赤な鮮血。伸びた手足と顔を覆う長い髪。
見えていないハズないのに、誰一人自転車を止めず、ひたすら坂道を上る。
心の中には様々な葛藤が生まれたものの、私もペダルを漕ぐ足を止めなかった。
――早くあの場所に辿り着かなければ。
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