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「沢田さん、一旦、家に戻りなさいな。まだ花世ちゃんが戻ってきていなかったら、念の為、警察に届けたほうがいいわ。私もここで花世ちゃんと知り合いになったご近所さんに声を掛けてみるから」
「あ、はい。ありがとうございます」
滝川さんに諭され帰る道すがら、やっぱりあの人は何かを知っているんじゃないかという気がしてならなかった。
花世があの夢の話をするようになったのは、一ヶ月前くらいからだっただろうか。
眠りが浅いのか、元々夢をよく見るタイプの花世は、変わった夢を見ると映画を観たみたいで得した気持ちになる、と言っていた。突拍子もない夢を見ると自分が何を考えてるのか不思議になる、と夢占いにハマっていた時期もあった。
初めはあの夢もいつもの突拍子もないモノだと思っていたけれど、種類が違うと話してくれた時、もっと真剣に聞くべきだった。
――少しずつ場面が変わるの。続きを見たり、前の時間に戻ったり。前はそこにいるだけだったのに、言葉が聞こえてきて会話をして、あの中に友達ができたり。私達ね、皆、同じ所を目指しているの。友達であってライバルなのよ。
そう言われても夢は夢だ。
同じ夢の続きを見る経験はないけれど、夢の中で会話をするなんて僕だってある。そう珍しいことじゃないだろう、と思った。
夢の中の友達との会話を教えてくれる花世を見て、寂しい気持ちにさせているんだなと申し訳なく思う気持ちが、少しずつ「怖い」という感情に変わっていった。それが花世にはバレていたんじゃないか。
花世はやっぱり戻っていない。電話で済ませるには気持ちが落ち着かないので、最寄りの警察署に出向くことにした。
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