ただいま

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ただいま

 午後十時。俺一人しかいないオフィスは電気が落とされ、目の前のパソコンの明かりだけが怪しく照らしている。  今の会社に勤めて三年目。望まない部署異動があり、慣れない仕事に手こずりながら過ごす日々。仕事が遅いからと上司や同僚に馬鹿にされ、誰にでも出来る雑用を大量に任されて家へ帰る時間も以前に比べて不規則になった。  こんな生活を支えてくれている妻には、帰宅が遅い日が続いたり朝帰りが増えたことから不倫を疑われる始末。正直に仕事だったと説明したが、それ以来少しギスギスした関係になり、最近では俺が「ただいま」と言っても「おかえり」は返ってこない。  高校時代に恋人となり、お互い別々の大学に進学したことをきっかけに同棲を始め、一年前に結婚した長い付き合いのある彼女。そんな妻に不貞を疑われたことは俺にとってかなりショックだった。  仕事ばかりで二人の時間を作ることが出来なかったのも原因だろう。今やっている仕事が終われば明日は休みだ。早く帰って少し仮眠をとって久しぶりに妻とどこか出掛けよう。  愛する美しい妻のために、真っ暗なオフィスの中で俺はパソコンに向き合った。
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