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「とりあえずこれで大丈夫でしょう。もしまたなにかありましたら連絡してください」
「本当にありがとうございます! ここ数日、この時間以外にも変な現象が起こっていて怖かったんです」
「……この時間以外にも?」
除霊している背後で様子を見ていた彼女は俺の思惑など知るよしもなく。少し顔を青ざめさせながら深く頭を下げて感謝の言葉を口にする。その言葉に引っ掛かりをおぼえた。
今回の霊は常に家の中に居るわけではない。死んだ時間に会社から家へ移動してきているはず。今回の霊を何度か乗せたことのあるタクシー運転手にも話を聞いて、会社からの送迎を頼んだくらいだ。
まさか他にも霊がいるのか。微かに金になりそうな匂いを察知し、深く事情を聞き出すために続きを促した。
「実はこの時間以外にも幻聴が聞こえるんです。私、一人暮らしなので防犯対策にいつも帰ってきたら『ただいま』って言うようにしてるんですけど“おかえり”って返事が返ってきて……」
「“おかえり”? ……確かに奇妙ですね。他にはなにかありますか?」
「他には、物の配置が少し変わっていたりしてて。例えばリモコンの位置だとか、枕の位置がずれていたり……ポルターガイストじゃないかと」
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