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弁財天
竜は驚いて空を見上げると、雲の中から光が差し込み、童子を左右にお供した天女が舞い降りてきました。
天女は白い羽衣を着て、それはもう美しい乙女でした。
そして天から雷とともに大岩が海に落ちて、ザブーンと大きな音を立てると、砂や石が舞い上がり、もくもくと煙が立ちこみました。
煙が消えていくと、荒波の間に小さな島が現れました。
天女はその島に降りると、辺りの岸肌は眩しく光り輝きました。
この天女は天から遣わされた竜王の娘、弁財天でした。
竜は天女の美しさに目を奪われ、その想いを伝えようと海を越え、天女の前で告白しました。
「ああ、天女様。わしはあなたの美しさに一目惚れしました。ぜひわしの妻になってください」
天女は憐れむような顔で竜を見つめると、返事を返しました。
「五頭龍よ、私は天からそなたのこれまでの行いを見ていました。そなたはむやみに人の命を奪い、田畑を押し流し、罪もない子供まで手にかけ、村人を苦しめてきましたね。私はそのような害を為す者の妻になることはできません」
それを聞いた竜は、自分がこれまでやってきたことを振り返り、とてもひどいことだったことに気づきました。
竜は深く反省し、天女に約束をしました。
「天女様、これまでの悪行を深くお詫びします。あなたの教えに従い、これより村人に害を為すことをやめ、村人のために尽くします。願わくば、わしの願いを聞き入れてくれないでしょうか」
竜の頭を垂れる姿を見て、天女は答えました。
「わかりました、あなたが改心したことを信じて、妻となってあげましょう」
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