龍口明神

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龍口明神

 それからというもの、喜んだ竜は一生懸命村人のために働き、田畑に雨を降らし、台風から村を守り、海からの大波に自分の身を挺して守りました。  村人からも守り神として尊敬されるようになり、天女からも愛され、幸せな日々を暮らすようになりました。  しかし竜の体は傷だらけになり、その体は次第に衰え、まもなく死が近づいていることに気づきました。  竜は天女を呼び、別れの言葉を伝えました。 「天女様、わしの命ももうすぐ尽きます。でも平和が続くよう、わしは山となり、村を守り続けましょう。その山を見守ってくれないだろうか」 「そなたが良い行いをしてきたことは、私がずっと近くで見ていました。安らかにお眠りなさい。いつまでも愛していますよ」  竜は飛び立つと島の対岸の空を泳ぎ、やがて姿が見えなくなると、そこに大きな山がそびえ立ちました。  この山は竜口山(たつのくちやま)と呼ばれるようになり、五頭龍は子死方明神(こしかたみょうじん)として祀られるようになりました。  これは今では片瀬山(かたせやま)と呼ばれる場所です。  こうして弁財天は巧みな言葉の力を持って竜を改心させ、民衆を守るために島を作りました。  この島は現在では江の島と呼ばれるようになり、天女は江の島の「弁財天」として、五頭龍は江の島の向かいにある「龍口明神」として祀られるようになりました。  二人は今もお互いを見守るように、寄り添っています。  おしまい
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