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子死越
「うわーん、えーん、えーん」
村の子供たちの大きな泣き声が聞こえてきます。
「よし、もっと苦しめてやろう」
村人たちの苦しむ姿を見て楽しくなった竜は、もっとひどいことを始めます。
鬼に物を盗んで困らせたり、驚かせて逃げ回る村人を見て、大笑いしていました。
「これは楽しい、もっとわめけ、もっと悲しめ、わははは」
さらにすごいいたずらをしてやろうと、竜が火の大雨を降らせてみると、家々は焼けてしまい、しかたなく村人たちは洞窟に隠れることになりました。
そうやって長い間、村人を苦しめていましたが、段々と飽きてきていました。
「なにかもっと面白いことないかな。そうだ……」
竜はペロリと舌なめずりをしました。
竜は湖の近くの谷までスルスルと下りていくと草むらにひっそりと隠れていました。
そこに近くに住む子供が水を汲みにやってきました。
竜が草むらから大きな体を現すと、子供は慌てて逃げ始めました。
「待てえ」
小さな子供の足は早くありません、竜は追いつくと、バクリと子供を一飲みにしてしまいました。
その谷には十六人の子供が住んでいましたが、味をしめた竜は、子供たちを見つけだすと次から次へと飲み込み始めました。
その騒ぎを知った多くの村人たちが別の土地へ逃がれようとしました。
この土地のことを子供が死ぬから逃げ越える、子死越と言います。
腰越という地名の由来とも言われています。
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