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高校生になって2回目の春。
相変わらず友達がいない私に話しかけてきたのは彼女達だけだった。
『ねえねえ、古賀さんってさ、あの噂本当なの?』
噂。
地味で暗くて話し相手がいない、学校で声を発するのは授業で当てられた時くらいの私の“噂”。
思い当たるのはひとつだけだった。
『うん、本当だよ』
彼女達は喜んだ。そして協力して欲しいことがあると言った。
『一緒に繁華街行かない?私達、ちょっと仲良くなりたい人がいて、でも有名だし結構やばい人なんだよね。だから古賀さんがいてくれるとすごく助かるの』
『って言っても軽く考えてくれたらいいから。一緒に遊びに行ってくれたらいいの。古賀さんはいるだけ。変なこととか何もないから』
『そうそう。古賀さんはいてくれるだけでいいの』
『ね?お願い!』
つまり彼女達は私を利用したいのだ。私の“噂”が真実なら、繁華街でとても利用価値があるから。
でも、私は頷いた。一緒に遊ぶ約束をした。だって嬉しかったから。
放課後にクラスメイトと遊ぶなんて、そんな夢みたいなことってない。
このチャンスを無駄にしたくない。遊びに行って、仲良くなって、一緒にお弁当を食べられるようになっちゃったりするかもしれない。
だから今日は私にとって待ちに待った日だった。
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