面影

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学校に上がる前、家族で泊まりがけで旅行に行った時、私は自分専用のシャンプーセットを買ってもらった。 シャンプーとリンスがセットになっていたけど、今私が持っているのはリンスだけ。 シャンプーは冷にあげたからだ。 『美容院ごっこしようよ!こころね、自分のシャンプーあるの!』 真夏の太陽が照りつける中、汗で髪の毛がベタベタして気持ち悪いと言った冷にそう提案して、公園の水道で髪の毛を洗い合った。 結局服も水浸しになっちゃって、2人でゲラゲラ笑ったっけ。 ———————ねえ、冷は覚えてる? 私、冷にシャンプーをプレゼントしたよね。お揃いで持ってようねって、言ったよね。 冷は今でも、持ってくれてる? 「⋯⋯⋯⋯」 目を閉じると、“男の人”になった冷の姿が浮かんでくる。 “消えろ” ⋯⋯無理だよ。 何があっても、冷だけは消せないよ。冷の存在が私の中でどんなに大きいか、わかってないからそんなこと言うんでしょう? もう一度だけ会いたかった。会ってちゃんと話がしたい。 昨日ので終わりだなんて、そんなの嫌だった。 「⋯⋯同じ学校って言ってたよね」 朔也さんの着ていた制服を思い出す。ここから電車を乗り継いで、1時間もあれば着くはずだ。 気付けば家を飛び出していた。
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