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あえてあまり考えないようにした。
朔也さんの忠告とか、冷の反応とか、私へ向けられる感情とか、それに傷つくかもしれない自分とか。
そういうことを考えると押しつぶされそうで嫌だった。
ただ会いたい。会って冷のことを知りたい。
私はやっぱり、冷のことを簡単に諦められないから。
「⋯⋯来ちゃった」
着いた場所は、この辺りで評判最悪の不良高校。まさか自分がここに来ることになるなんて⋯⋯⋯今更だけど、なんだか現実感がない。
制服の上にパーカーを羽織って、よし、と心の中で気合いを入れる。
ここの制服と私の学校の制服はスカートが似ている。だからあえて制服のままで来たのだ。パーカーの前を閉めると、なんとなく馴染んだような気分になる。
⋯⋯⋯⋯今のうちに入ろう。ここにいたままだと逆に目立つかもしれないし。
ドキドキしながら校舎に入ると、早速数人の生徒と教師が廊下の先にいた。
「だからトイレだって」
「トイレは逆方向だ。どうせ学校抜け出すつもりだったんだろ。ほら、教室戻って授業受けろ!」
「だって数学じゃん。俺ら数字見たら頭痛くなるんすよ。まじで倒れるかもってくらいでー」
「じゃあお前ら全員、時間を確認するとき毎回倒れそうなのか」
「そうっすー」
「嘘つけ!」
「つーかあっちも抜け出そうとしてるやつらいますよ。ほら行かなくちゃ」
「っ、お前らは教室戻れよ!いいな!」
そうして教師は新しく現れた別の生徒達に「おいそこ!止まれ!」と怒号を飛ばして駆け寄って行く。
⋯⋯不良だ。いきなりこんな場面に遭遇するなんて。びっくりするくらい評判通りだ。
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