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「昨日一緒に歩いてたのはこの子だよ。この子の⋯⋯⋯⋯そういえば名前なんだっけ?」
「あ、心です。古賀心」
「この心ちゃんが冷の知り合いで、店に来たから帰りに駅まで送っただけ。今日も冷に会いに来たって言うから、俺はそれを止めてたんだよ」
「なんで冷の知り合いをわざわざ朔也が送るわけ?冷が送ればいいじゃないのー!」
「冷に頼まれたんだよ」
——————————えっ。
予想外の言葉に息を呑む。朔也さんはそんな私を一瞬見て目を逸らすけど、聞かなかったことには出来ない。
「どういうこと⋯⋯⋯どうして冷がそんなこと言うの?」
「あー、絶対俺文句言われる」
「ねえどうして!?」
私の剣幕についさっきまで声を荒げていたサチさんが口を閉ざす。でも今は他のことに構ってる余裕はなかった。
「俺が聞いても答えなかったよ。でも心ちゃんが冷に話しかけた後から、ずっと気にしてたのは確か」
「⋯⋯え?」
「店の中で1回俺が話しかけただろ?あれも冷に頼まれたからだよ」
自分が「頭のおかしい女」と言って追い払った女を、冷は追いかけるように朔也さんに言ったという。追いかけて駅まで無事に戻るのを確認するようにと。
でも私はまだ店の中にいた。すると今度は帰るまでずっと見てるように言われて、何かあったら知らせてくれと冷は頼んだ。
————————昨日のことが思い出されていく。
絶妙のタイミングで来てくれた冷。私のことを助けてくれた冷。
「で、なんか雰囲気悪くなったから冷呼んだら、あいつ自分でさっさと連れ出すからまじで意味わかんなかった」
⋯⋯⋯冷。
あれはやっぱり⋯⋯⋯⋯私を助けてくれたの?
でもそうだとしたら、どうして⋯⋯⋯⋯
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