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「⋯⋯サチ」
「だって可哀想じゃん。こんなに会いたがってるのに何で止めるのよぉ」
「冷はまじで嫌がってんだって。だから俺も協力して⋯⋯」
「冷のこと裏切っといて今更何言ってんのー。心ちゃん、“この女”とか言って超ごめんね。朔也もひどい事言ったなら謝ってー」
「それは本当ごめん。冷に頼まれたとはいえ、初っ端からきついこと言ったのは自覚してる」
サチさんに言われると弱いのか、朔也さんは驚くほど素直にそう言った。
私は2人から急に謝られるなんて思ってないから慌てて「気にしないで」と伝える。
冷の居場所がわかったなら、今すぐそこに行ってみよう。
「教えてくれてありがとう!」
「いえいえー。なんかよく知らないけど上手くいくといいねー」
すぐに視聴覚室まで走った。
嫌がられても消えろって言われても、昨日みたいに引いたりしない。私にだって意地があるんだから。
「はぁ、はぁ」
5階は視聴覚室の他に空き教室と美術室があって、そのどこにも人の気配がなくて静かだった。
だから視聴覚室の扉を少し開いただけで、その音は私の耳にしっかりと届いた。
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