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「————っ!」
落ちていく。5階から地面へ、私の手の届かない場所へ離れていく。
「しつけえよ、お前」
遠い。
とてつもなく遠くて埋まらない距離が冷と私の前に立ちはだかる。
冷たい瞳に負けないよう、ぎゅっと手を握りしめて冷を見つめ返す。
「お前に話すことなんて何もない。昨日無事に帰れるようにしたのは、俺への未練を断ち切らせるためだ。変にトラブルに巻き込まれて、また関わることになったら面倒だからな」
「そ⋯⋯そんなの信じない!」
「再会なんかしたくなった」
———————泣かない。そう決めたんだ。何があっても絶対今日は折れないんだから。
ひとつだけ教えといてやる、と冷が言う。
「あの時引っ越したのはここからそう遠くない場所だ。お前の住む街は小1のガキには遠くても、少し時間が経てば行けない距離じゃない。でも俺は会いに行かなかった」
「⋯⋯っ」
「興味なかったからだよ。俺の人生からとっくにお前は消えてる」
好きでも嫌いでもなく、興味がない。それはおそらく、関係を修復させる上では絶望的な言葉だと思う。
だけどそれでも。
存在を全否定されても一緒にいたい。そう思う私はおかしいのかな?
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