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「でも⋯⋯私の人生から冷は消えないもん。この先もずっと一生⋯っ」
「触るな。穢れる」
伸ばしかけた手がビクッと震える。
穢れる⋯⋯だって。
触れることも許されない。さっきの女の人は身体中に触れてキスまでしてるのに、私は指先だけで冷を不快にさせてしまうの?
「俺とお前じゃ生きる場所も価値観も、何もかも違うんだ」
「⋯⋯っ、どうして?そんなの気にしない、どうにでもなるじゃない。私は冷のことなら何だって知りたいし、否定したりなんて絶対しない!」
「黙れ」
「冷が危ないことしてたって怖くない!」
「黙れ!」
身体が硬直する。驚く程きつい声だった。
私が口を開くことを決して許さない、冷の全身がそう語っていて思わず一歩後ずさる。
「もう1度言う。俺の前から消えろ」
———————どうして?
そんなに私は冷にとって疎ましい存在なの?
他の誰に否定されてもいい。だけど冷だけは受け入れてくれると思って今まで生きてきたのに。
「わたしは⋯⋯っ」
泣きたくなかった。自分でそう決めていたし、冷にまた「鬱陶しい」と言われるのも嫌だった。
でも泣くのを堪えた声は情けないほど震えていて、自分の弱さが嫌で嫌で仕方なかった。
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