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冷の世界
1日探して見つからなかったからって、冷との思い出の品であるリンスボトルを簡単に諦めることはできなかった。
だけど翌日から休日で、部活動に熱心に取り組む生徒などいない不良高校の校門は当然ながらしっかりと施錠されていた。
⋯⋯しょうがないよね、休み明けにまた行こう。大丈夫、きっと見つかるよ。
頭の中は冷のことばかりだった。
考えて、考えないようにして、それでもまた考えて。
もどかしい気持ちを抱えたまま土日を過ごして、ようやく迎えた月曜日。息苦しい1日を終えてよし探しに行こうと気合いを入れ直した時だった。
「古賀心ちゃん?」
学校を出て駅に方に少し進んだ場所で声をかけられて視線を向ける。
え、私?
名前を呼ばれたことに驚いて、そしてその人を見てもっと驚く。
「わかる?俺のこと」
彼は制服姿だった。冷や朔也さんと同じそれだ。それにその顔には見覚えがあった。
「金曜日、一瞬目が合ったと思うんだけど」
「⋯⋯冷の」
「そうそう、冷の」
視聴覚室まで冷を呼びに来た、あの男の人だった。
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