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「どう?今の冷を見た感想は。怖い?不気味?もう関わりたくない?それともまだ知りたい?他にもやばいこと色々やってるけど」
「⋯⋯⋯⋯」
「泣くほど哀しい?」
静の声に、いつの間にか流れていた涙に触れてゆっくりと拭う。だけど頬には後から後から新しく流れてきて、まるで意味のないことをしてるようだった。
「⋯⋯こわくは、ない」
あっという間に立っているのは冷だけになってしまった。再会してからもっと遠くなってしまったその姿は、まさに“孤高の人”と呼ぶに相応しい。
「怖くはないけど、でも、どうしてって⋯⋯」
「何が?」
「こんな風にしてる理由がわからなくて⋯⋯わ、わたしじゃ何も⋯⋯っ」
一瞬、知らない人みたいだった。それほど冷の放つ空気は暗く冷たくて。
認めたくないのに、私と冷の世界の違いを、価値観の違いを認めてしまうようで怖かった。
バッグに大事に閉まったリンスボトルの存在を思い出して、縋りつきたいような気持ちになるくらいに。
「じゃあもっと知りたくなった?」
「⋯⋯静は⋯⋯友達がああやってるの、どう思うの?」
「俺は冷の友達じゃないよ」
⋯⋯⋯⋯え?
なんてことないように言った言葉は聞き間違いなんかじゃなくて、静はふっと小さく笑う。
「ああ、もしかして朔也と同じ感じだと思ってる?それは間違い」
「じゃあ⋯⋯どういう⋯⋯」
「さあ、何だろ。どう思う?冷」
えっ、と今度は思わず声が出た。
「ここで何してる」
振り返ると、鋭い瞳でこっちを見る冷がいた。
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