299人が本棚に入れています
本棚に追加
「いい加減にしろ」
「———!」
グッと顎を掴まれて一気に顔が近づく。だけど甘い雰囲気なんて程遠いくらい、冷は本気で殺気立っていた。
「人の過去探ってんじゃねえよ」
「っい、た⋯⋯い」
「本気で犯してやろうか」
強い力に顔が歪む。痛い、痛い。冷たい瞳にまた泣きたくなる。
でも⋯⋯⋯
「⋯⋯⋯⋯いいもん。冷になら何されたっていい!それでそばに置いてくれるならそうするよ!」
私の言葉が予想外だったのか、冷の手が一瞬緩む。その隙を見て、その手を掴んで無理やり自分の胸に重ねた。
「さあどうぞ!お好きに触ってください!」
「⋯⋯おい」
「む、胸は物足りないかもしれないけどっ、でも抵抗なんてしないから!」
言いながら、身体全体が震えていた。自分でも何を言ってるのかわからないし、ほとんど勢いでこんなことになってしまって驚いていた。
だけど驚いてるのは冷も一緒で「やめろ」と言った声は少しばかり戸惑っているように聞こえた。
バチっと手を振り払われて、それからうんざりしたように息をつく。そんな姿もとても絵になる程、冷は綺麗だった。
「お前なんか抱く気にならねえよ」
「⋯⋯っ、そうだよね。冷が穢れちゃうもんね。冷の周りには綺麗な人がいっぱいいるんだし、物足りないよね」
「⋯⋯⋯なんでそこまで俺にこだわる」
——————なんで?
そんなの、私だって知りたいよ。説明なんて出来ないよ。
ただ、冷と一緒にいたいだけなんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!