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「で、そばに置いてどうする?あの子とまた仲良くする気になったか?」
「⋯⋯そばにいるのは許したが、後は何も許してない。無視してればいつか諦めるだろ」
「俺にはそうは思えなかったけど」
心は冷に執着していた。友達とか好きな人とかそういう次元を超えて、心にとって冷は何にも代えられない存在だと、少し一緒にいただけの俺にもわかった。
だから冷だって絶対わかってるはずだ。
でも⋯⋯
「それでも、諦めさせる」
冷は心を受け入れない。どんなに心が頑張っても、冷は差し出された手を払いのける。
どうして、ときっと心は泣くだろう。それに対して冷は何も答えない。
そしたら心は————————
「じゃあ俺が貰っていい?」
冗談混じりにへらっと笑って言うと、冷は今度は睨まなかった。より一層暗く冷たくなった瞳をこっちに向けて、小さく呟く。
「好きにしろ」
「いいの?あの子はお前がいいみたいだけど」
「————あいつだけはあり得ない」
その声はぞっとする程威圧感があった。
「この世に女があいつだけでも、俺は絶対に手を出さない」
「⋯⋯⋯⋯」
「お前には貸しがあったな、静。あいつはくれてやるから、俺を諦めさせろ」
「⋯⋯気が乗らないって言ったら?」
「どの分際で断ってる」
思い出せ、と言われてるようだった。自分の罪を。冷にしたことを。どうして冷が心を——————過去を拒むのか、俺はよく知っている。
「俺に罪悪感があるなら聞けるだろ」
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