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「冷、なんでこいつがここにいるの?」
「“こいつ”呼ばわりかよ」
「ねえ冷、こんなやつ入れないでよ」
俺のことなんか完全無視で冷に近付いて、その拳に血が付いてることに気付くと、純ははっと冷の手を取った。
「また喧嘩したの?怪我してる」
「大したことねえ」
「お願いだから無茶しないでよ。冷に何かあったら私⋯⋯」
「大丈夫だ」
「⋯⋯⋯うん」
純のやつ、俺の時と随分と声のトーンが違う。まあ今更気にもならないが。
それに冷も、純には優しい声を出す。
「でもちゃんと手当てしなくちゃ。待ってて、消毒とか買ってくる」
「純、いい」
「私が嫌なの。ついでにこいつも追い出して来るから」
もちろん俺の意見は求められていない。
そしてあっという間に腕を引っ掴まれて玄関の外に追い出されていた。
「何しに来たの」
「別に何でもいいだろ」
「よく冷のそばにいられるよね。高校だって同じとこにして、信じらんない」
「進路は不可抗力だろ。俺も冷も他の学校だと浮くに決まってる」
「そんなの言い訳でしょ」
冷には絶対にしないであろうきつい表情で俺に吐き捨てたかと思えば、「早く帰ってよ」と目線で促される。
「冷はどう思ってるか知らないけど、私はあんたのこと絶対許さないから」
「⋯⋯⋯⋯」
「今すぐ消えて」
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