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「今日は流れ星が降るんだってな」
男は夜空を遠く見上げながら言った。
「流れ星ってのは、いつもは降らないからいいんだよな」
男はずっと、何かを語っているが、僕は、その話を聞いているだけ。相づちも打たない。
その後、しばらく男は一人で喋ったが、とうとう話すことがなくなったらしく、その場は静まりかえった。コロコロ。虫の音が聞こえる。
その後、しばらく僕らは何も話さずに空を見上げたが、その沈黙はやはり男が破った。
「なあ。お前、父ちゃんと母ちゃんは生きてんのか?」
急に男が聞いた。
「いや、死んだ。母ちゃんは二年前に病気で。父ちゃんは・・・知らない」
しばらく声を発していなかったので、声がパサパサしていた。
「そうか。それは残念だな」
男はぶっきらぼうに返した。急に変なことを聞いたのに、それについて何も言わないというのは、どうなのだろうか。
そう思い、男を見つめると、男はポケットに手を突っ込んで、その中から白く光る石を取り出した。
「これは何?」
僕が聞くと男は答えた。
「これはね、星のかけらだ。僕はきれいな石を集めているんだ」
「星のかけら?」
「うん。僕はこれを集めてる。だから今日も流れ星を見に来たんだ」
星のかけらって、流れ星が落ちたところでとれる物ではないのかな。そう思い、男に尋ねる。
「でも、ここにいても確かに流れ星は見えるかもしれないけれど、星のかけらはとれないよ?」
それを聞いて、男は少し目を細くした。微笑んでいるのか、悲しんでいるのか。
「そんなこと、気にしなくていいだろ」
男は細くした目を少しずつ開いて、答えた。
その後、僕らはポツポツと会話をして、じーっと空を眺めた。
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