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しばらくして、ヒュッと細い線が空を横切った。「流れ星だ・・・」
そう僕が呟くと、男は少しだけ口角を上げて
「見れて良かったね」
と言った。そして、男は立ち上がり、僕に向かって手を差し伸べた。僕は、その手を掴んで立ち上がる。
「これ、お前にあげる。大切にしろよ」
男は、星のかけらを僕に差し出してきた。
「え、これって集めてる大事な石だよね?」
僕が聞くと男は今までとは少し声を変えて、穏やかに言った。
「良いんだ。持ってけ」
「あ、ありがとう」
男は僕に星のかけらを握らせた。
そして、僕に聞いた。
「お前、どこから来たんだ?」
「地球」
僕が答えると、男は少し目を細くして言った。
「僕もだ。やっぱり仲間だね。この星では地球人は差別されることが多い。でも、そんなこと気にするなよ」
僕が頷くと、男は
「やっぱり僕に似てるな、お前は」
と満足そうに言って、もう一回夜空を見上げた。
「あそこにある、少しだけ大きい青い星。あれが僕らの地球だ」
やっぱり。あれが地球か。
そう思っていると、男は
「もう俺は行かないと。元気にやれよ」
と言った。
そして、僕に背中を向けて歩き出した。ヒュルリ。風が男のコートをなびかせる。
その後ろ姿を、僕は何年も前に見たことがあるような気がした。
男が去った後も、僕はしばらく草原でぼうっとしていた。
手のひらの上で白い石が、星の光を浴びてチラチラと輝いた。
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