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その日の晩、私は夢を見た。
視界に映るのは端正な顔立ちの若い男。彼は笑顔で私に話しかけてきた。
『葉須美』
途端に私は弾かれるようにして飛び起きた。
心臓がバクバクと激しく高鳴っている。冷たい汗がいく筋も頬に流れる。震える手を握り締めながら、私は心の中に浮かぶ確信を得ていた。
(あの人は……私の夫だ)
途端に涙が溢れてくる。
(なんてこと……!)
溢れる涙が止まらない。
せめて嗚咽が漏れないように、私は必死に両手で口を押さえた。そして痛みを堪えるようにして目を閉じる。
(戻らなきゃ……あの人の元に、戻らなきゃ……!)
強い意志のもとで、私は再び目を開けた。
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