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   実は、葉須美は美杏が連れてきたカモだった。  最初に俺に惚れ込んでいた客は美杏だった。  彼女は俺好みの美人だったので、俺たちは相思相愛だった。  金欠に喘ぐ俺の為に、美杏は葉須美を連れてきてくれた。  彼女らは高校時代からの友人だったらしい。  大手のIT企業に入り働き詰めだった葉須美に、『たまには息抜きでもした方が良いよ』と言って誘い出したのだった。  彼女は美杏と違って不美人だったが、たんまり金を持っていると聞いていたのでそりゃもう心を込めてサービスした。「笑顔が魅力的だ」とか「君といると心が安らぐ」とか甘い言葉を囁くと、いとも簡単に俺に夢中になってくれた。今まで男にモテてこなかったんだろう。彼女の相手は赤子の手をひねるように容易かった。  そうして親しい仲になった時、葉須美は結婚願望を口にした。  だが俺は、彼女と結婚する気なんてさらさら無かった。  そりゃそうだろう。どうせなら、美人の美杏の方が良いに決まってる。  だが、意外にも俺と葉須美の結婚を後押ししたのが、何を隠そう美杏だった。  彼女はニヤリと笑って俺に言ったのだ。 『結婚してから高い保険金を掛けて、事故に見せかけて殺せば良いのよ』  俺はその話に乗った。  恐ろしいが魅力的な提案だった。  葉須美を消して大金を手に入れて、それから改めて美杏と結婚しようと考えた。  計画は順調だった。  俺のことを信用しきっていた葉須美は、お互いを受取人にした高額の生命保険に入ることに何の疑問も持たなかった。  後は機を見て葉須美を殺すだけ……そう思っていた矢先のことだった。
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