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ある日の夜、鬼のような形相をして葉須美が俺に詰め寄ってきた。
テーブルの上には俺と美杏が逢瀬を重ねている写真が並べられていた。いつの間に調べていたのか、彼女は俺と美杏がずっと隠れて付き合っていたことを突き止めていたのだ。
証拠の写真を叩きつけて葉須美は俺を罵倒した。
『最低! もう何も信じられない! 今すぐに離婚して!
私の名義のこのマンションからも出て行って!
貴方にも美杏にも慰謝料を請求してやるんだから!』
責め立ててくる葉須美の言葉に、俺もカッとなってしまった。
『このブスが! ちょっと煽てたら調子に乗りやがって!
最初からお前とは金目当てだったんだ!
金目当てでもなけりゃ、誰がお前なんか相手にするもんか!』
そうして俺は葉須美を殴った。馬乗りになって、容赦なく殴りつけていた。
気が付いたら、彼女はぐったりとして動かなくなっていた。
……まさか、殺してしまったのだろうか?
恐る恐る脈を確認すると、辛うじてまだ生きていた。
でも、救急車を呼んだりしたら俺がやったことがバレてしまう。
駄目だ。このままこの女を生かしておくわけにはいかない。
どうしようかと狼狽える中、俺は必死に頭をフル回転させた。
そして、意識の無い彼女を車に乗せて近くの埠頭へ向かうことにした。
ここは海に近い街なので、15分ほど車で走れば港に着く。
真夜中、人気の無い埠頭に着くと俺は車から降りた。
彼女を中に乗せたまま車を再発進させると、それは勢いよく海の中へ飛び込んでいった。
黒い海の中に白いセダンが沈んでゆく。
完全に沈み切るのを確認して、俺は急いでその場を立ち去った。
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