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---待ち侘びていた。この“瞬間”の為だけに、私は“あんなこと”でさえ頑張れるのだ。
ガラリと錆びついた引き戸を開けて、その空間に目的の人物がいるかを目視で確認する。---よかった、まだ居てくれた。
扉の鍵を丁重に閉めて、私はその人物と“2人きり”の空間を作り上げる。
漆黒の髪、長いまつ毛、整えられた制服。日向に晒されているのは日常的なのに、日焼けをしないその真っ白な肌が羨ましくて仕方がない。
「禅---起きて」
「…、ふぁ、」
「また眠ってるの?---本当に睡眠が好きだね」
「---なんだ、八神か」
なんだ、って失礼な反応だな、と思う。瞳を開けば、吸い込まれそうになる程の昏さと美しさを秘めている。そんなパーツにでさえ、恍惚とした感情を抱いてしまう。
「…今日も頑張ったの。だから禅、私に“ご褒美”ください」
気怠気な動作で、眠っていた身体を起こす禅。ふわりと空気が揺れて、距離が詰められる。
禅が少しだけ口を開けて、---私の唇を盗む。
そうだ、私は、“コレ”が欲しい為に、彗と“付き合う”という関係性を必死に“保っている”のだ。
私の快感を揺さぶるように長くて重厚な舌先が動き回る。床に押し倒されて、制服のボタンを躊躇いなく外される。
「禅。---大好き」
私はきっと、救いようがない程の最低な女だ。
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