①八神 璃玖

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ムードのカケラもない、木目調の床を背にして。情の含まれない触れ合いを、ただ一心に渇望する。 「…狡いなぁ、彗は」 「…ん?」 「こんなに禅に想われて、---羨ましい」 「相変わらず八神は変わった女だね」 リボンが解かれる。身動いだ反動でスカートが捲りあがる。だけれど禅は、女特有の武器に一切の陶酔をしてくれない。 「---彗の匂いがする」 私の首筋に鼻先を埋めてそんな感想を溢す禅は、どこまでも彗一筋な男だ。 「…さっき、彗と居たから」 「八神を抱いていると、---彗を抱いている気分になれる」 だから、禅が興奮してくれているのは、私の存在ではなく。私に残り香として染みついた、彗の温もりなのだ。 私が彗なら、禅の想いに応えられるのに。 ---神様は、意地悪だ。
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