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ムードのカケラもない、木目調の床を背にして。情の含まれない触れ合いを、ただ一心に渇望する。
「…狡いなぁ、彗は」
「…ん?」
「こんなに禅に想われて、---羨ましい」
「相変わらず八神は変わった女だね」
リボンが解かれる。身動いだ反動でスカートが捲りあがる。だけれど禅は、女特有の武器に一切の陶酔をしてくれない。
「---彗の匂いがする」
私の首筋に鼻先を埋めてそんな感想を溢す禅は、どこまでも彗一筋な男だ。
「…さっき、彗と居たから」
「八神を抱いていると、---彗を抱いている気分になれる」
だから、禅が興奮してくれているのは、私の存在ではなく。私に残り香として染みついた、彗の温もりなのだ。
私が彗なら、禅の想いに応えられるのに。
---神様は、意地悪だ。
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