0人が本棚に入れています
本棚に追加
9/28
家から1時間ほど離れた某ホームセンター内のペットショップまで引き取りにいく。ククナは今日住み慣れたホームセンターから引き取られるとはつゆ知らずに無邪気に遊び回っていた。
責任の重さをひしひしと感じさせるには十分すぎるほどに煩雑な誓約書と保険の契約書を書き、やっと引き取り手続きへ。ククナはケージへ入った後も僅かな隙間から小さな手を伸ばし、取っ手を掴む俺の手をぺちぺちと叩いてくる。
両者とも運転に自信がなく、休みだった義父に頼んで連れてきてもらっていたため、ククナを入れたケージは義父の助手席に固定された。
ついに猫を飼う日々が始まるんだ。そう思った矢先、早速ハプニングが起きる。
ショップを発ってから5分後、ククナの様子がおかしい。さっきまで大人しかったのに、突如大声で鳴き始めた。なんならイカ耳になって怒っていらっしゃる。そんなにショップから離れるのが寂しいか。そりゃそうだ。逆の立場なら泣き叫ぶはずだ。仕方がないさ…。家族総出であやしながら運転を続行すると、突如車内に悪臭が立ち込めた。卵が腐ったような、籠もったガスの臭い。初っ端から粗相をしてしまったのだ。うんちまみれになってブチギれながら大鳴きするククナ。真横で粗相されて、急ぐべく車を猛加速させる義父。臭いに耐えるほか何もできずに狼狽えるばかりの俺と妻。阿鼻叫喚とはまさにこのことか、と思わずにはいられないほどの地獄のような有り様であった。
タクシードライバーを生業とする義父のドラテクによって予定よりも早く帰宅した俺達は、部屋より先に風呂場へと放り込み、うんちを踏みに踏んで汚れきった手足や尻尾を洗うことになった。お迎え0日目でのお風呂。多くの猫飼いがいると思うが、初日からここまでの目に遭う者はそういないのでは無いだろうか。洗いを買って出た妻は噛まれ、服も髪もうんち塗れにされて大変な目に遭っていた。俺はケージの掃除をしていたが、残留したうんちの粒が少しあるだけでなかなかの悪臭。妻の鼻が心配だ。
やがて洗い終えると、待っていた義父と俺の二人がかりでククナを羽交い締めにしてドライヤーをかけたり、うんちがこびりついた毛を少し切るなどした。小さな身体からは想像できないほどのパワーで男二人の拘束を引き剥がすと、ククナはようやく落ち着いた。家の三階建てケージに入るとリラックスした様子で、男二人で撮影会を繰り広げていた。
その後、汚れたペットベッドを綺麗にし終えた妻を労うべく、スーパーで買ったお寿司と惣菜で歓迎会をすることとした。波乱万丈のスタートだったが、何年か後にはそれもよい思い出になることを祈りたい。人の気も知らず、ククナはどこか得意げに上段から俺達を観察していたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!