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子猫の朝は早い。俺が8時にのそのそと起きた時にはすでに目を爛々と輝せながらエビの蹴りぐるみとバトルを繰り広げていた。そして夫婦で朝食をとろうと席についたと同時に大声をあげながらトイレをしたため、朝食が数十分遅れてしまった。ブリーダーの調教か個性かは知るよしもないが、どうやらククナはトイレをする前に鳴いて教えてくれるらしい。心なしか小の時は小さく、大の時は大きく鳴く。もし個性だとしたらなんて賢いのだろうか。
そして昼食にペペロンチーノを作っていると、ケージから熱い視線を感じた。動く手元が面白いのかケージから身を乗り出して、にんにくとベーコンを刻む俺をまんじりともせず見つめているではないか。太陽のような褐色の毛並みにつぶらな瞳は飽くことなく、じっと俺を見てくる。まるでそれは観察であった。ニーチェの言葉を借りるなら、「猫を覗く時、猫もまたこちらを覗いているのだ」と言った所だろうか。果たして観察しているのはどちらなのだろう。そう思いながら熱々のペペロンチーノを啜る俺達を、ククナはやはり飽きることなくじっと見つめていた。
夜、目やにが気になったので濡れコットンで拭いてやろうとするも頑なに拒否。暴れこそしなかったが手を突っ張って抱っこを拒否する始末。抱えていた妻が着ていた黒いTシャツは早くも抜け毛がびっしりとついていた。嫌がるのも理解できるが、これでは先が思いやられるな。そう思いながら俺が夕飯のハンバーグをこさえ始めると、その時もまたククナは俺を観察していた。食べる時も、皿を洗う時も、米を研いでる時も。そんなに見ていてよくも飽きないものだ。…まあ、こっちもそんなククナを見ていてちっとも飽きないが。そんな思いを含ませながら、俺は明かりを消しつつククナにおやすみの挨拶をした。
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