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「正直、俺は運命なんて信じていない。どうでもいいと思っている」
「まぁ」
「俺が騎士になったのは、騎士の家系だったからだ。特別な理由なんてない」
それは、裏を返せば騎士になりたくてなったわけではないと言っているようだ。
……いや、実際にそうなのだろう。
「別に縁を切ろうが結ぼうが。個人の自由だ。……運命に従い続けるなど、俺には出来ない」
「ふぅん」
私はティーカップを手に取って、口に運びつつ彼のことを見つめる。
本当に美しい男の人だ。彼の運命の相手が、厄介者になるのもうなずけるというもの。
「……そういうわけで、縁切りを頼みたい」
彼がちらりと私に視線を向けて、そう言った。
……さて、縁切りを頼まれたと言っても。
「おあいにくさまね。私は厄介ごとに巻き込まれるのはごめんよ」
顔の前でバツ印を作って、私ははっきりとそう吐き捨てた。
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