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「何怒ってんのさ?」
「べっつにぃ!」
なんだなんだ? と思うも、祐基はブツブツ何か言っているだけだ。
よく聞くと「貧相で悪かったな……」と呟いていた。女々しいな、おい……。と紗夜は呆れる。
だが、己にそう言われて拗ねているのが、なんだかとても可愛らしく感じた。
「本当にあんた可愛いよなぁ……」
「誰が可愛いじゃ、ボケェ!」
ぷんぷん怒っていても、ますます可愛さを引き立てるだけだというのに。
そんな祐基の様子が笑いのツボに入ってしまった紗夜は、ひたすらに笑い転げる。
それに対し、祐基がますますキレるという悪循環が生まれた。
ひとしきり笑い、また一方はキレ散らかし、落ち着いた。
「飯食わなきゃ」と祐基が言い出し、買ってきていたコンビニ弁当を温め始める。
そんな祐基に紗夜は「あんた……、まだ自炊できないの?」と言う。
図星を突かれ、彼は情けない表情を浮かべた。
紗夜は、生きていたら作ってあげられたのにと、残念に思う。
ちなみに、祐基の自炊力は破滅的だ。
炊飯器すら扱えないのだから困ったものだ。
ギリギリ洗濯機などは扱える。
何故洗濯機は使えるのに、炊飯器が無理なのかは、今だに判明していない。
電子レンジの出来上がりの音が響き、祐基は弁当を取り出した。
死んでしまってから、食べなくてよくなった紗夜だが、見ると食べたくなるのだから不思議なものだ。
そんな紗夜の様子に気付いたのか、祐基は、憎たらしいほど笑顔で見せつけるように弁当を食べた。
この時の紗夜の心境は、殴れるなら殴りたい、だった。
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