第五話

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 「何怒ってんのさ?」  「べっつにぃ!」  なんだなんだ? と思うも、祐基はブツブツ何か言っているだけだ。 よく聞くと「貧相で悪かったな……」と呟いていた。女々しいな、おい……。と紗夜は呆れる。 だが、己にそう言われて拗ねているのが、なんだかとても可愛らしく感じた。  「本当にあんた可愛いよなぁ……」  「誰が可愛いじゃ、ボケェ!」  ぷんぷん怒っていても、ますます可愛さを引き立てるだけだというのに。  そんな祐基の様子が笑いのツボに入ってしまった紗夜は、ひたすらに笑い転げる。 それに対し、祐基がますますキレるという悪循環が生まれた。  ひとしきり笑い、また一方はキレ散らかし、落ち着いた。 「飯食わなきゃ」と祐基が言い出し、買ってきていたコンビニ弁当を温め始める。 そんな祐基に紗夜は「あんた……、まだ自炊できないの?」と言う。 図星を突かれ、彼は情けない表情を浮かべた。 紗夜は、生きていたら作ってあげられたのにと、残念に思う。  ちなみに、祐基の自炊力は破滅的だ。 炊飯器すら扱えないのだから困ったものだ。 ギリギリ洗濯機などは扱える。 何故洗濯機は使えるのに、炊飯器が無理なのかは、今だに判明していない。  電子レンジの出来上がりの音が響き、祐基は弁当を取り出した。 死んでしまってから、食べなくてよくなった紗夜だが、見ると食べたくなるのだから不思議なものだ。  そんな紗夜の様子に気付いたのか、祐基は、憎たらしいほど笑顔で見せつけるように弁当を食べた。 この時の紗夜の心境は、殴れるなら殴りたい、だった。
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