第六話

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 予想外の言葉に、祐基は素っ頓狂な声を上げてしまう。 子供? 結婚していたのか? と頭がパニックに陥っていく。  「ちなみに、未婚の母だよ」  「あ、そ、そうなんか……」  まだ、合点がいってない祐基に、紗夜は分かりやすく伝える。  「子供は今二歳だよ、もうすぐ三歳になる」  子供の年齢を聞き、祐基は目が落ちそうなほど見開いた。それは、もしかしなくても……?  「それって、もしかして……、俺の子か……?」  祐基の震えた問いに紗夜は、目を閉じて頷いた。  「な、なんで、お前……、教えてくれなかったんだよ……!」  ダンっと机を叩き、祐基は怒鳴る。 そんな彼を優しく見つめ返し、紗夜は「迷惑になりたくなかった」と答えた。 迷惑だなんて……! 気まずくなって、逃げてしまったのは己だったが、教えてくれれば責任を取っていた。 確かに、焚きつけたのは紗夜だったかもしれない。 しかし、それに乗っかったのは祐基だ。 迷惑だなんて思わないのに……!  「ずっと、一人で頑張ろうって思ってたの……」  紗夜は語る。 子供を諦められなかったこと。 祐基との子供を産みたかったこと。 ずっと子供の事を隠し通すつもりだったこと……。 祐基は、指先が白くなるほど拳を握りしめていた。 己がのうのうと過ごしている間に、紗夜は苦労していたんだと思うと、自分を許せなかった。  「……今、子供はどうしてるんだ?」  「私の実家に引き取られたよ」  紗夜がそう答えると、祐基は真面目な表情で告げた。  「俺、子供に会いたい」  紗夜は驚きで目を見開き、そして、涙を流し始めた。 グズグズと泣きながら、「会ってくれるの?」と祐基に再度確認した。  「うん、会いたい……! 今更かもしれないけど、俺に出来る事をしてあげたいよ……」  そう言ってくれた祐基に紗夜は、抱き着くように彼の体を包み込んだ。 「ちゃんと触れられたら、抱きしめられるのに……」と少し悔しそうにしている。 そんな紗夜が、祐基は愛おしくて、そして、好きだと思った。  成仏するまでの短い時間かもしれない。 でも、やっと二人の絆が本当の意味で深まっていく、そんな感覚を感じた。 少しの時間でもいい。 なりたかった関係を築いていきたい。 祐基はそう願った。  「なぁ、紗夜。子供は男の子か? それとも女の子?」  「女の子だよ。名前は希美っていうの」  「希美……。いい名前だな……」  二人で寄り添いながら、祐基が見ていない産まれたころから紗夜が見ていたところまでの、希美の話をした。  そして、次の休みに祐基は、紗夜と共に希美の元へ行ってみることにした。 家に入れてもらえるかは分からない。 それでも、祐基は希美に会いたいと思ったのだ。  その日の夜。 祐基の布団に幽霊である紗夜も一緒に潜り込んだ。 まるで恋人同士のようにそっと二人で身を寄せるように眠りにつく。  あと少しで終わってしまうこの時間を噛みしめた。
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