タダイマ、マイコ。オカエリ、コーチャン。

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     嬉しそうに僕の肩を叩き、最後に「また頼むよ」という言葉を残して、田山は立ち去っていく。  そんな彼の後ろ姿を見ながら、僕は複雑な心境だった。  田山には「お手柄だぜ」と言われたが、たとえ今回これで事件解決に貢献できたとしても、僕は全く喜べないのだ。  彼の「まるで小鳥マスターだな!」という賞賛も見当違いであり、別に僕は小鳥の扱いが特別上手なわけではない。あのインコが僕の前であんなセリフを口にしたのは、おそらく別の理由だろう。  ああ、子供の頃に覚えた変装術を駆使して、せっかく女装して(かよ)っていたのに、インコのせいでバレてしまうとは!  しかし田山みたいに「例えばコウジとかコウスケとか」と解釈されている間は、つまり苗字由来の『コーチャン』だと知られないうちは、まだ大丈夫。僕が真犯人であるという事実も、なんとか隠し通せるのではないだろうか……? (「タダイマ、マイコ。オカエリ、コーチャン。」完)    
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