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「『捜査の話』ってことは……。そのインコ、何か事件に関係するのかい?」
どよどよとした内心は隠して、あくまでも平静を装いながら、僕は田山に聞き返す。
「ああ、三丁目の事件だ。木暮も聞いているだろう? 女性専用マンションで暮らしていたOLが殺された件。その被害者が飼っていたのが、このインコでね」
インコといえば、人間の話し言葉を覚えることで有名な小鳥だ。
さすがにインコが発する言葉を直接的な証言として採用するのは無理としても、事件に関する重要な手がかりになる可能性はある。そう考えて、田山たち捜査チームは、インコから何か聞き出そうとしているらしい。
「……だけど俺たち、小鳥の扱いなんて慣れていないからなあ。今のところ『オハヨウ』と『オヤスミ』くらいしか言ってくれなくて……」
右手で鳥籠を持ったまま、左手で軽く頭をかく田山。
そんな彼に対して、僕は苦笑いを浮かべた。
「だったら、それしか飼い主さんが……つまり被害者の女性が話しかけなかったんじゃないの?」
「もちろん、その可能性もあるが……。なあ、木暮。何かインコを扱うコツってないか?」
「うーん、どうだろう? 確かインコは、顔まわりを撫でると喜ぶって聞いたような気が……」
と、一応はアドバイスっぽいことを口にしながら、僕は鳥籠に顔を近づけて、隙間から指を入れようとしてみる。
すると、その途端。
籠の中の小鳥が『オハヨウ』とも『オヤスミ』とも違う言葉を発したのだ!
「タダイマ、マイコ。オカエリ、コーチャン」
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