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「おお、凄いぞ! さすがは木暮、まるで小鳥マスターだな!」
興奮する田山を落ち着かせる意味で、僕は努めて冷静な態度を示す。
「ええっと、確か被害者は、女性専用マンションで一人暮らしだったんだよね? だったら彼女一人で『タダイマ』と『オカエリ』を言うのは、ちょっと変じゃないかな?」
「そう、だからこそ大きな意味がある! なにしろ……」
田山は落ち着くどころか、むしろさらに昂っているような口調だった。
「……被害者の名前が『麻衣子』だからな。つまり『タダイマ、マイコ』の部分は彼女のセリフじゃなくて、彼女が口にしていたのは『オカエリ、コーチャン』の方だけ。例えばコウジとかコウスケとか、とにかく『コーチャン』と呼ばれる男がいて、そいつが『タダイマ、マイコ』と言っていたってことさ!」
被害者は一人暮らしで、しかも女性専用マンションだったのだから、その『コーチャン』なる人物は一緒に住んでいたわけではないのだろう。
しかし被害者の部屋で『タダイマ』という言葉を、それもインコが覚えてしまうほど頻繁に言っていたのだから、それこそ半同棲と呼べるくらいに足繁く通っていたに違いない。
田山は、そのように推理しているようだった。
「この『コーチャン』って男が一番の容疑者、いや少なくとも重要参考人だな。お手柄だぜ、そんな男の存在をインコから引き出せたのは!」
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