今日もきみの瞳に映らない

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「……藤原とか、どうなの?」 急に発されたその名前に、わたしはわかりやすく動揺してしまう。 びくっと身体を揺らして大袈裟だって笑われそうだけど、彼女にきっとこの反応の意味は伝わっていない。 何も分かっていないからこその発言だろうし、何度も言われてもう慣れてしまった。 「どうって……。いつも言ってるけど、どうもこうもないよ」 「とか言って、意外と仲良しなの知ってるんだから。理咲(りさ)も早く彼氏作った方がいいよ」 「果音(かのん)だっていないくせに偉そう」 「あたしは作らないだけだもーん」 目の前に座る彼女はそっぽを向いて開き直る。出席番号が前後で高校に入学して1番初めにできた友人である高橋果音。 ぱっつん前髪にふわふわした長い髪、ぱっちりした目がお人形さんみたいで可愛らしい。ショートボブで特に特徴のないわたしとは正反対の女の子。 教室中の話し声が交錯するお昼休み、向かい合ってお弁当を食べるのは入学当初から変わっていない。女の子らしさが全開で、可愛いの具現化みたいな果音を目の前にしながらご飯を食べるのも、その時に同じ質問をされるのももう慣れっこだ。 "藤原"、その名前が不意に出てくると過剰に反応してしまうから、もしかしたら慣れてなんかないのかもしれないけど。 「とにかく、(れん)くんとは何もないし何も思ってないから」 「ほらそれ! 藤原のこと"蓮くん"なんて呼ぶの理咲しかいないじゃん!」 「それは小中からの名残なの」
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