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大嘘と、本当のこと。
目をキラキラ輝かせる果音には申し訳ないけどいつも嘘をついている。
"蓮くんとは何もないし何も思ってない"
果音と出会ってからずっとつき続けている嘘。"何もない"ことは本当。だけど、"何も思ってない"のは嘘。
藤原、と聞くたび反応してしまうのも、蓮くん、と呼んでいるのも、全部、"小中からの名残"。
「藤原、いいと思うんだけどなぁ。お似合いだと思うよ」
「蓮くんとわたしじゃ釣り合わないよ。本当にお似合いだったらきっととっくに付き合ってるよ」
自分で言っておきながら傷つく。目の前にいる可愛いの具現化は不満げだ。でもわたしの方が膨れたいよ。自分の言葉が鋭いナイフのように突き刺さってるの。……嘘をついている自分のせいでしかないけど。
ちらりと、目線を動かしてみる。男子の輪の中で笑うきみがこの席からはよく見える。
……よく見えるから、わかることがある。……よく見ているから、わかることがある。
「(……あ、)」
ちらりと見ていたはずが、いつのまにかじっと見てしまっていたみたい。不意にぱちっと目があって我に返った。かっこよくて、誰にでも好かれて優しい、人類の模範生みたいなひと。
目が合って、わたしが焦るより前にスッと視線を外される。まるで、目が合った事実をこの世からなくすように。
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