天沢翔

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天沢翔

 「……えっ」  翔がそう声を漏らしたのは、授業の板書を写すために開いたノートが自分のものではないことに気づいたからーーというわけではなかった。  いや、正確にはそれだけではなかったというべきだろうか。  開いたノートの中には、翔の姿があった。  サッカーをしている翔が、鉛筆で描かれていたのだ。  ノートの表紙を見ても名前は書いていないーーが、ノートが入れ替わったとすれば、さっき廊下でぶつかったときしか考えられない。  ということは、これはのノートだろう。 「おい、どうした?」  ノートに書き始めない翔を怪訝に思ったのか、隣の席に座っていた玲央に小突かれた。  ノートの中身が見られないように隠しつつ、翔は玲央にノートが入れ替わっていたことを話す。 「マジかよ。ノートやるから、とりあえずこれに書いとけば?」  玲央が自分のノートのページを破り取って渡してくれる。
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