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5時間目の授業は、先生の出張の都合だとかで、かなり早めに終わった。
教室に戻る途中で、玲央に話しかけられる。
「翔、授業中もなんか変だったけど、どうした?」
玲央には、翔の様子がおかしいことがバレていたようだ。
翔は玲央にノートを見せる。
「マジか……」
玲央は目を見開き、少し黙った後でつぶやいた。
「……小野寺結衣の目には、お前はこんな風に映ってるんだな。」
「……え?」
「なんか、キラキラした姿ばっかりじゃないじゃん。」
そう言われて、玲央はノートのページをめくった。
最初の方こそ、試合中や笑って話しているときの姿など、玲央のいうキラキラした姿だろう絵ばかりだったが、ページが進むにつれてそうではなくなっていっていた。
地味なトレーニングをしている姿だったり、雨や土でどろどろになった姿だったりが描かれているのだ。
普段から周りにもてはやされているような表面的な部分ではないところを、ちゃんと見ている人がいたということ、そしてそれが結衣であったということが嬉しかった。
翔は、結衣のクラスの前でチャイムが鳴るのを待ち、教室から出てきた結衣をつかまえてノートを返した。
……もしかして、小野寺さんも俺のことを……。
そして、そんな希望を抱きながら、放課後に会う約束を取りつけたのだ。
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