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市村玲央
学校の帰り道。
玲央は、手を繋いで前を歩いている、翔と結衣の姿を眺める。
彼らはノートを取り違えたのは偶然のことだと思っているようだが、そうではない。
2人がぶつかってノートが散らばったとき、玲央が咄嗟にノートを入れ替えたのだ。
玲央は、翔が結衣に好意を抱いていることを知っていた。
だから、落ちているノートの見た目が同じであることに気がついたとき、ノートを入れ替えて渡すことを思いついたのである。
これが2人が話すきっかけになったら、というくらいの軽い気持ちだった。
……かっこよくてモテる翔なら、1度話せば好意を持ってもらえるかもな。
玲央は、入れ替わったノートをきっかけに恋が始まるとか運命的な展開だよな、なんて思ったりもしていた。
まさか、その結衣のノートに、翔の姿が描かれているとは思ってもみなかったのだ。
誰にも見せるつもりなどなかったであろうその絵を、翔本人に見られるような形になってしまって、結衣には悪いことをしたなと玲央は考える。
でも、それがきっかけで2人はお互いの気持ちに気づいたんだから、結果的にはよかったよな、と気持ちを切り替えた。
……俺は、アイツらの、恋のキューピットだな。
……そして、あのノートは、2人を繋いだ運命の1冊だ。
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