小野寺結衣

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 結衣は、スケッチブック代わりに使っているノートを取り出した。休憩がてら、サッカーをしている翔の姿をスケッチする。  描き終えた絵を見て、結衣は納得のいく出来に満足した。  その後も結衣は、作品づくりの合間の息抜きとしてノートに翔の姿をよく描いた。  他人を勝手にモデルにするのは良くないことなのかもしれないが、翔はアイドル的な存在だったからか、描くことにあまり抵抗を感じなかった。  翔の姿を目で追ううちに、結衣は彼に惹かれるようになっていた。  翔は「才能がある」「何でも持っている」と思われているようだが、いつも見ていると彼が努力していることがよくわかった。  翔が部活後に残って自主練する姿をよく見たし、小雨で部活がなくなったのであろう日にも1人でグラウンドにやってきて練習していた。  そうして、ノートは翔の姿で埋まっていった。  だから、あのノートの中を彼に見られたら結衣は終わりなのだ。絶対引かれるに決まってる。
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