小野寺結衣

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 チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。  落ち着かない気持ちを抱えながら、授業を受ける。  結衣は、翔がノートの中身を見ていないことを祈った。  ノートを持って移動していたということは、その可能性は低いだろうけど。  でも……、と結衣は考える。  中身を見られても、ノートには名前を書いていないから誰のものかなんてわからないんじゃないだろうか。  結衣は、同じ学年のほとんどの人が知る、翔のような存在とは違う。元から翔に認識されているということはないだろうし、1度ぶつかっただけの人の顔を翔が覚えているということもないだろう。  結衣が持っている翔のノートは、彼がいない間にこっそりと机に置きに行けばいい。勝手に翔を描いたことへの謝罪と、ノートは返してくれなくていいということをメモに残しておけば、持ち主を探そうとはしないと思いたい。  結衣はそう結論づけて、5時間目が終わったら翔のクラスに置きに行こうと決めた。
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