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高校のとき、発情したオメガの女の子が他校のアルファの男の子に乱暴されたという事件が起こった。あの子はたしか、加害者の子どもを妊娠して退学した。発情に関わりオメガがアルファによって襲われるという事件は、一般的にはあまり報道などはされないけれど、昔も今も発生数は少なくないらしい。
だからオメガのみなさんはきちんと自分の発情周期を管理し、必要に応じて発情抑制剤を使用するなど自衛しなければなりませんよ。先生はそうも言っていた。
アルファが支配するこの世界において、アルファとオメガの間で起こった諍いは大抵、オメガに非があるとされる。オメガは被害者で、弱者の側なのに。
この世の秩序はつねに少数のアルファの立場に寄っている。
だから彼も、アルファが嫌いなのだろうか。今までに被った不利益、不平等、そんなものへの鬱憤を晴らすために、私にあんなことをしたのであれば、納得できる気がした。
私はあのあと、散々だった。拘束されたまま、彼の甘い残り香に感覚を支配され逃げられない狭い室内。疼き続けるからだの芯。太腿をすり合わせて熱を逃がそうとしたけれど全然うまくいかない。
悶々とした時間は永遠のように感じられた。手に自由があったなら、疲れ果てて眠りに落ちるまで自慰に耽っていたかもしれない。
はじめてだった、そんなことは。
からだからすべての血液が集中したように熱くなって、硬く勃起した性器。あれを触りたいと思ったことなんて、あの瞬間までなかったのだ。
無事に助け出され、帰宅した後、記憶にある彼の残り香を反芻しながら、下着の上から触れた。それだけで、彼の手の感覚を思い出して、吐精した。
一度ではおさまらなくて、一晩中狂ったように触り続けた。自慰を覚えたばかりの男子中学生みたいだと自嘲しながら。
もう出るものなんて残りかすですら残っていないというほど、先端から零れる液体に色と粘度が失われてようやく、気持ちがおさまった。
やっぱり枯れるまで絞り出さなければならなかったのだ。翌日は全身が怠く、眠くて眠くて仕方がなくて、大学を自主休講にした。
そして休んだ理由を莉子に尋ねられ、白状して今に至る。
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