道化る

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 他の女の子にはない部位が、果たして正常なのか異常なのか、夜な夜なネット検索した時期がある。  高校生になる直前のことだ。無限に広がる電脳世界で私は簡単に迷子になり、最後はエロ動画サイトにたどり着いたけれど、生身の人間が素っ裸で、猥雑な音を立てて貪り合っている生々しいさまに、性欲を刺激されることはなかった。醜いな、とすら思った。いつか自分も狂ったようなあの行為をするのかと考えると寒気を感じた。  あれから数年越しに、私は狂ったように互いの肉体を貪るひと組の男女を、夜な夜な脳内で生み出している。  あの彼が服を脱いだら。雨に濡れたティーシャツを脱ぎ捨てて、あらわになった美しい肌を、私の肌に重ねたら。彼の繊細な指先によって、からだの隅から隅まで触れられるのを想像しながら、私は私を慰める。女の子らしいルームウェアとレース模様のショーツは、膝までずり下げてしまったらただの手触りの良い布きれでしかない。  脳内の彼が教えてくれたやり方で、硬くなった自分自身を弄りまわす。さして大きくはないけれど、これまでの人生でけっして無視はできなかったそれ。  ほんの少し前まで、股のあいだにくっついている邪魔なもの、という認識でしかなかったのに、接し方次第でこんな快感を与えてくれるだなんて、知りたくなかった。   何回、何十回と手淫するうちに当然吐精の瞬間にも慣れてくるし多少コントロールが利くようにもなる。最近枕もとに置きっぱなしのティッシュ箱から数枚引き抜き、そこに欲望を吐き出した。  達する瞬間に無意識に呼吸を止めていたのかティッシュを丸めながら、ふう、と息を吐いたら、居た堪れなくて、恥ずかしくて、視界が潤んだ。  出す前は出したくてたまらないのに、出してしまったらすっと熱が引いて冷静になって、ぽっかりと穴が空いたような虚無感に襲われる。後悔もする。彼を慰みものにしたことを。いくら可愛らしく着飾っていても、汚れた欲望まみれの自分自身を。  彼の名前を口ずさみたかった。  何度も何度も呼びたかった。   でも、呼ぶべき名前すら知らないのだと、絶望的な気持ちがした。 ◆
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