道化る

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 きっちりしたスーツに身を包んだ壮年の男性キャスターが司会者で、その横に数人のコメンテーターが並んでいる。男性、女性、評論家に小説家に芸能人、大学教授。ひとりひとりが、名前と華やかな経歴を紹介するテロップとともに、バストアップで映し出される。  最後に紹介されたのは、小太りで薄毛の中年男性。趣味の悪い色のネクタイに重なったテロップに書かれた文字には、——M大学教授・片岡涼平。  ほんとうなら、あっさりと名前を教えてくれた時点で疑うべきだったのかもしれない。  でもどうして疑うなんてことができる? 偽名を使われるなんて誰が想像できる?   なにが「ありがちな名前だから」だ。  聞き覚えがある名前のような気がしたのは、このニュース番組を私がほぼ毎週流し見しているからだったのだ。思わず頭を抱えて項垂れ、ぐしゃぐしゃに掻きむしった。 「あのやろう……っ!」  
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