潮染む

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 密着しそうで、しない距離感。私に覆い被さった彼の顔が、キスできそうなほど至近距離にある。滴を頬に落とすまつげがあまりにも綺麗で、追い詰められている立場なのに、いつまでもこの距離で見ていたいとばかみたいに考えた。  さゆの手はとまらない。 「や、だめ、出ちゃう」  「早すぎ。ちょっとは我慢する努力すれば?」 「むり。さゆの手、気持ちよすぎて、なんかもう、だめ。も、イきそう」 「じゃあ我慢できたら、ご褒美あげる」  絞り出すように上下運動していた手が、今度はやんわりと先端を撫でる。 「我慢ってどのくらいすればいいの?」  「どうしようかな。10分くらいいける?」 「長い、むり、1分で」 「短すぎ。5分」 「せめて3分」 「ほんと早漏だな」  でもすぐに、時間にかかわらず、我慢も何もないと悟った。  彼の手の動きによって絶頂近くへと追い立てられる、でも達する直前にわざとらしく刺激を弱められ、引き波のように吐精感が離れていく、かと思えばまた打ち寄せる、その繰り返し。  イきたい、イけない、もどかしさでおかしくなりそうだ。翻弄されるままに漏れ出そうになる声を、下唇を噛んで堪える。 「……っ、いま、何分、くらい?」 「あ、はかってなかった」 「ひどっ」 「でも頑張ってたからご褒美あげるよ」  さゆはそう囁いて、噛み締めていた私の下唇を指でなぞった。 「ほんと?」 「なにがいい?」 「またデートしてほしい」 「今してるのに、もう次のこと考えてんのかよ」  笑いながら、さゆは膝を折り、私の前に跪く。お姫様にかしずく騎士のように、上目遣いに私を見上げた瞳にどきりと心臓が鳴った刹那、屹立した性器が躊躇いなく口腔に呑み込まれた。 「ふあ……っ!」  血液が集中して熱く滾り、絶頂の寸前まで導かれたそれよりも、さらに温度の高い口の粘膜にぬるりと包まれる。  さして大きくないので、簡単に根元まで咥えられてしまう。手で触れられる感覚とはまるで違った。熱くて柔らかくて、呑み込まれたところ全部、いまにも蕩けてしまいそう。  さゆの舌が蠢く。その舌づかいは私にとってはあまりにも刺激が強かった。  どこをどうやって舐れば、それを一番悦ばせられるのかを熟知している動きだった。
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