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そこでようやく気づいたけれど、彼はどちらかと言えば中性的な顔立ちをしている。だから、そうやって微笑むとまるで女の子のように可愛らしい。清純派を気取っている女性アイドルよりもずっと、花のように清廉で上品だ。
今までに出会った誰よりも可愛いかもしれない、なんて一瞬本気で思った。
甘い匂いに満たされた肺が軋む。
このひとがオメガなら。
この匂いが、オメガのフェロモン?
触れられたままの指先が私の肌を滑る。首筋、濡れたブラウスのうえ、それから腰をやわく掴んだ。
「そうだよ。俺はオメガだ」
言い終わる前に腰をぐっと引き寄せられ、距離感を一気に失くしたふたつの肉体のあいだに言葉尻が押しつぶされる。
まばたきをしたら、花のような微笑が消え、そこにいたのは小悪魔だった。
「あんたたちアルファに虐げられるだけの性、オメガだよ」
「虐げ、る、って」
「でもさ、アルファって圧倒的強者って言われるけど、ちょっと匂い嗅いだだけで発情して理性失うなんて、劣等遺伝子もいいとこじゃない? そう思うだろ、あんたも」
アルファの矜持、なんてものを持ち合わせているわけではないけれど、煽られているのだとわかる。
アルファが嫌いなのだろうか。まあアルファに好感を抱いているオメガは数少ないのかもしれない。
だってアルファとオメガの二者の関係は、彼の言うとおり、虐げる側と虐げられる側、襲う側と襲われる側、孕ませる側と孕む側、どこまで行っても強者と弱者でしかないのだ。
でも、見下すような口許すらぞくぞくするほどの色香をまとっているそのひとを前に、なにもかもがどうでもよくなる。どんな言葉を投げつけられても、それを発する唇はあんなにも蠱惑的だ。
おかしいのだろうか、私は。私の性は。
「おねえさん、俺を抱きたい?」
腰に置かれた手が誘うように下半身のラインをなぞり、太腿に張り付いたフレアスカートの内部に差し入れられる。敏感な内腿をわざとらしく擦りながら、男の指先は私の中心に躊躇いなく近づいていく。
「ぅあ、やっ、」
思わず逃れようと腰を引くけれど遅かった。
「うわ、勃ってる」
下着越しにかたちを確かめるように握る、彼の手のなかにあるのは、膨らみきった私の性器。スカートの下で棒状に伸び、血液が集中し、熱く硬く変質したそれ。
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