ただいま

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 「ただいま」  僕は後ろ手に玄関のドアを閉めながら言う。 「おかえり~」  軽やかな言葉が一日の疲れをいやしてくれるのを感じる。 「夕飯何?」 「分かるでしょ、買い物お願いしたんだから」 「やっぱり?」  僕は手に持っていた買い物袋をキッチンカウンターに置いた。  中身は豚肉とチューブのすりおろし生姜。  使いかけキャベツが冷蔵庫に入っているのは知っている。 「生姜焼きだね」 「そうよ、得意料理だもの」 「美味しいから嬉しいよ」 「まずは着替えて、それから手伝ってね」 「もちろん」  僕はキッチンに向かって投げキスを一つ。  それから部屋着へと着替えにかかる。  部屋着と言ってもくたびれた短パンとTシャツだけど。  とにかく、ネクタイを外す解放感は一日の何にも勝る快感だ。 「あー、疲れた」 「今日もお疲れ様。毎日大変だね」 「ありがとう。さあ、夕飯を作ろうよ」 「ええ、そうね」  僕はキッチンへと戻り、カウンターに置いていた袋から豚肉のパックを取り出した。
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