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だけど、今日の昼間に晴海に出会って、対局をして、初めて囲碁ってすごいんだなと思った。それに晴海のことも。たった一手で盤上の風景を変えてみせるところ、石の打ち方がとてもきれいなところ、そしておおらかで神様みたいな笑顔で笑うところ。とても眩しくて、また勝負をしてもらいたいし、碁の打ち方を教えてもらいたい。 そんな理由で晴海のところに碁を教わりに行ってもいいのだろうか? 放課後はバイトがある日以外は大抵暇だからいつでも相手してやると、晴海は言っていたけれど。 「ふふ。でもママはね、策ちゃんが打ち込めるものがサッカー以外にもあって、よかったなぁって思うよ」 策太はママから目をそむけて助手席の窓ガラスを見た。ボサボサ頭で目付きが悪くて仏頂面の自分が映っている。子供の贔屓目を抜きにしても美人なママとはあまり似ていない。今は一緒に住んでいない遺伝上は父親ってだけのクソ野郎に似てしまった。この顔のせいで、いつも怒っているみたいだと他人からよく言われる。ママから存在自体がDVとか言われていたクソに似ているなんて最悪だ。この仏頂面が原因で晴海から出入り禁止にされたりしないことを願うしかない。
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