12/17
前へ
/37ページ
次へ
「こっちの方が取れそうって思ったんだな。よく二兎追うものは一兎も得ずっていうけど、囲碁では兎が二羽いたら二羽とも視野に入れる。両方とも獲ってやる、片方だけなら穫れるかも、いや他にもっと大きい獲物がいるかもしれないって考えながらね。二羽の兎を天秤にかけたこと自体が花丸だ。結果は間違っていたとしても、その発想があるのはいい。ただここはなぁ、」 晴海は先ほど打った大ゲイマの石を取り上げて、実戦で策太が打った場所にそれを移した。 「こっちの白は取れそうに見えるけど、黒がこう打ったら白はこの薄みを狙ってコスんで、同時に二箇所ノゾくだろ。それで策太はこっちを守ったけど、逆の方を守っても結局、黒は封鎖されて生きれないか、生きても小さく生きることになる。だからここは白を獲ろうとせずに、大ゲイマで反対側の白をやんわりと封鎖。ここまで、わかった?」 策太はうーんとうなった。 「こんなやんわりで、この白、本当に取れんの?」 「いや、よっぽど上手くしないと取れないんじゃないかな」 じゃあダメじゃん、と思ったらそれが顔に出てしまっていたのか、晴海がくっくっと喉を鳴らした。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加