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「策太は石を取るのが好きだね。まるでハンターだな。だけどこの部分は白を仕留めるために囲うんじゃなくて、白に小さく生きてもらいつつこっちに壁を築くために囲ってるんだ。白が生きようとあがいて来たら、殺すことに手数を使わないで、ここをしっかり繋げて切られないようにする」 晴海はパチパチと黒と白を交互に打ち、一人で攻防戦を描いていく。白は巧みに黒を攻め、狭い中でもなんとか生きを確保した。 「ここだけ見ると、白はちゃんと生きたし、隅の黒がいじめられてちょっと悔しい展開だな。でも策太、外側を見てごらん。おかげで立派な壁が出来ただろう。それが下辺の模様と連動して、左辺から下辺にかけて、すげえ大模様の出来上がりだ」 そう言われて策太は碁盤全体を見渡した。盤上の風景が一変している。左辺から右下隅までにかけて、半分以上が広々とした白の領土に見えた。いつの間にこんな風景になっていたのだろう? まるで地平線の果てまで続く草原を見渡すような清々しい気分だ。そんな策太に晴海は穏やかな声色で語りかけた。
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