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「獲物を追い詰める気概と執念は大事だよ。負けん気が強くなかったら勝負事には勝てないからな。でも策太、碁盤に向かっている時に限っては、俺達は神だ。ハンターではなくて。だから目指すところは獲物を殺すことじゃなく、」
テンモウカイカイ ソニシテウシナワズ
魔法の呪文のような言葉を晴海は唱えた。実際、魔法にかけられたような気分だった。晴海の一手で、言葉で、盤上の風景ががらりと変わったことも、彼に出会ったことも、彼の存在自体も、まるで魔法だ。
「天の神様は、争わずしてよく勝ち、言葉なくしてよく応じ、呼ばずに自ら来させ、ゆったりと自然体でいながらよく謀る。世界を包み込む神様の網はとても大きく、その網目は粗いようでいて何一つ失うことはない。それが天網恢恢疎にして失わずってこと。囲碁の競技者もまた同じ。いつだって天網恢恢疎にして失わずの気持ちで打つこと。わかった?」
盤の向こう側で、晴海は策太の目を真っ直ぐに見つめている。眉を開き、目を細めたその表情は、
神様……。
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